Tata、2026年に「Sierra EV」「Avinya」を投入へ──「EVならTata」を強化する動き
インド在住のインドビジネス専門家、株式会社hoppin CEO・滝沢頼子が、インドの最新ニュースをピックアップし、現地ならではの視点で解説します。ニュースの概要に続き、専門家コメントをお届けします。
インドを代表する自動車メーカーでEV市場トップのTata Motorsは、EVのシェア低下が続く中、2026年は積極的な新モデル攻勢で巻き返しを図る。
まず注目されるのが「Sierra EV」だ。Tata Motorsは2026年5月にも「Sierra EV」を投入する見通しで、55kWhと65kWhの2種類のバッテリーが用意される見込み。

競合はHyundai Creta Electric、MG ZS EV、Mahindra BE 6などを想定している。
デザインは1990年代に人気を博したSierraのボクシーなスタイルを踏襲しつつ、フロントには閉じたグリル、新設計のエアロダイナミクス対応アルミホイールなどEV専用のアップデートが施され、価格は200万ルピー(約360万円)前後からと予想されている。
さらに年末には、プレミアムEVサブブランド「Avinya」の第一弾モデルも登場予定だ。

AvinyaはTataのGen 3スケートボードEVプラットフォームをベースとしたプレミアム独立ブランドで、現行のHarrier EVを超える300万ルピー(約540万円)超の価格帯に位置づけられる見通し。
Tata Motors Passenger Vehiclesは2030年度までに5つの新EVモデルを投入し、インドの電動乗用車市場で45〜50%のシェア獲得を目指すと表明。そのために2025〜30年度にかけて1兆6,000〜1兆8,000億ルピーの投資を計画している。
専門家コメント(hoppin 滝沢頼子)
2025年、インドの四輪EV市場でTataのシェアは大きく低下した。かつて73%近くあったシェアは約40%まで落ち込み、「EVならTata」という消費者の前提は崩れ始めている。

しかしこのSierra EVとAvinyaの動きを見ると、Tataは守りに入っているわけではない。Sierra EVは現在の主力であるNexon EVやCurvv EVより一段上の価格帯・車格をカバーし、Avinyaはさらにその上のプレミアム層を狙う。つまり、ラインアップの「上への拡張」を一気に進めようとしている。
これはMahindraがXEV 9e・BE 6で中高価格帯に新需要を生み出したことへの、Tataなりの回答と見ることができる。「安くて信頼できるEV」というTataのイメージに、「かっこよくて上質なEVもTataで買える」という軸を加えようとしているのだ。
Sierra EVについては、1990年代に愛されたSierraというネームバリューを使う点も興味深い。インドの消費者、特に30〜40代には「Sierra」への郷愁がある。デザインと感情的な訴求を組み合わせて、新しい顧客層を取り込む戦略は、日系メーカーも参考にできる視点かもしれない。
- 執筆者プロフィール -
滝沢頼子/株式会社hoppin
東京大学卒業後、UXコンサルタントとして株式会社ビービットに入社。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。
その後、上海のデジタルマーケティング会社、東京のEdtech系スタートアップを経て、2019年に株式会社hoppinを起業。UXコンサルティング、インドと中国の市場リサーチや視察ツアーなどを実施。2022年よりインド在住。








