【解説記事】トヨタ・インド、FY2025-26に過去最高の40万台超を達成──「売らない施設」temも貢献と公式発表


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トヨタ・キルロスカー・モーター(TKM)がFY2025-26(2025年4月〜2026年3月)の年間販売実績を発表した。総販売台数は前年比20%増の40万6,081台と過去最高を更新。

3月単月でも前年比24%増の3万7,194台を記録した。好調の要因としてTKMは、SUV・MPV・コンパクトセグメントにわたる製品ラインアップの拡充やハイブリッド技術への注力を挙げた。

注目すべきはTKMの公式コメントだ。販売・サービス担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのSabari Manohar氏は「Drum TaoのインドツアーとのコラボレーションおよびToyota Experiential Museum(tem)が、Z世代へのリーチとテクノロジー志向ブランドとしてのポジショニング強化に貢献した」と明言した。

参考記事


専門家コメント(hoppin 滝沢頼子)

今年2月、私はバンガロールにオープンしたToyota Experiential Museum(tem)を実際に訪れ、「なぜトヨタはインドで車を売らない施設を作ったのか」という記事を書いた。

temの入口(筆者撮影)

現地で体験して感じたのは、temは車を売る場所ではなく、「面白そうだから行く」場所として設計されており、日本の四季や和太鼓の映像体験を通じてトヨタというブランドに自然に触れてもらう空間だということだった。

temの内部(筆者撮影)

あれから約2ヶ月。トヨタ自身の決算発表の場で、temが「Z世代へのリーチとブランディングに貢献した」と明言された。記事を書いた時点では「この試みがインドでどこまで受け入れられるか」という問いで締めたが、その答えの一つがこのタイミングで出てきた形だ。

インドの自動車市場は一人当たりGDPが3,000ドルに近づき、四輪化が本格的に始まるフェーズに入りつつある。この「今まさに市場が形成される」タイミングで、まだ車を買う段階にないZ世代と接点を持っておくことの意味は大きい。temはその布石として機能していると言えそうだ。

日系企業がインドで「売る」前に「好きになってもらう」という順序を意識した戦略を取るのは、まだ珍しい。トヨタのこの動きは、インドへの参入を考える日本企業にとって参考になるやり方だと感じる。

hoppin

- 執筆者プロフィール -

滝沢頼子/株式会社hoppin

東京大学卒業後、UXコンサルタントとして株式会社ビービットに入社。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。
その後、上海のデジタルマーケティング会社、東京のEdtech系スタートアップを経て、2019年に株式会社hoppinを起業。UXコンサルティング、インドと中国の市場リサーチや視察ツアーなどを実施。2022年よりインド在住。

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