インド人の「できます!」の意味とは?その裏にあるインドの思考法から考える
先日、アメリカで働く高校時代の友人と会う機会があり、ある悩みを相談をされました。
彼女いわく、「職場にインド出身の同僚がいるんだけど、『できる』って言ってたから任せた仕事ができていないことがあって、何度も衝突してるんだよね。私インドと相性が悪いのかな…。」
話を聞いて、インドで働いたことがある私はそれはインド人のあるあるだと思って少し笑ってしまいました。
もちろんインド人全員が全員、そうという訳ではありません。でもそれはインドで仕事・生活する中で自分自身、他の日本人からもよく聞くような話でした。
本記事では、
・インド人の「できる」の意味
・「できる」の背景にある「ジュガード」という思考法
・私たち日本人は、どんなことに気をつけてインドで過ごすと良いか
を、具体例を用いて紹介していきます。
混乱が起きることも?インド人の「できます」の意味
私はインド在住時代、製造業の採用サポートをしていたので、技術部門の採用面接にも同席することがありました。
そこでの日本人採用担当者の質問に対して、求職者の回答はほとんど「できます」でした。
当初、製造業経験が浅い私でも、「あれ?おかしい」と思うまでに時間はかかりませんでした。
求職者に追加質問をして、よくよく掘り下げていくとその「できます」の意味は、「一回やったことがある」(積み重ねや成果はない)」「先輩のやっているところを見たことがある(だから、できると思う)」ということが多々ありました。
それって「できる」とは言わないのよ!と、思わず突っ込みたくなるタイミングがはその後のインド生活で何度もあったことは言うまでもありません。
日本人は8割の根拠があっても「できる」と言い切ることに慎重な一方、インド人はたとえ根拠がなくても「できる」と、自信を持って表現する傾向があるな、と私はインドでの経験から感じました。
インドの問題解決の精神「ジュガード」とは?
とりあえず「できる」と言ってやり始めるインド人の姿勢は、インドの「ジュガード」という精神によるところもありそうだと感じます。
「ジュガード」とは、インドに古くから根付く問題解決の精神を表す概念です。
ヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」や「独創性と機転から生まれる即席の解決法」を意味します。
これはとても素晴らしい考え方で、私自身が生きる上でも身に着けたい考えた方の一つです。
できない理由よりできる方法を考える思考法、止まらずに走り続ける精神力、完成度3割以下のアイデアでもとりあえず走ってみようとする思い切りの良さ、私たち日本人が苦手としがちなことばかりです。
ただ、それ故にインドの人たちは「できる」という言葉を私たち日本人と比較し、かなりフランクに使いがちであり、それが仕事の上で日本人とのコミュニケーションミスを生む原因となることもあると言えるのではないでしょうか。
インドのレストランでも発見した「ジュガード」
「できる」がコミュニケーションミスにつながることがある一方、その根底にあるジュガード精神がもたらすのは悪いことばかりではありません。
例えばインドのレストランで注文する場面。
インド在住歴が長い友人と食事に行った際、友人はメニューにないオーダーを「できる?」と確認。
「え?そんなことできるの?」と私は思ったのですが、店員さんは「できるよ!」と爽快に答えてくれました。
些細なことですが、私には驚きでした。「できるの?面倒じゃないのかな…」と。
日本だったら、メニューにないオーダーを尋ねることは、私は少し図々しいと感じてしまいそうですし、申し訳ない気持ちにもなります。だからできるかどうか聞いてみようなんて思いません。
それが、インドではそんなことはなく、聞くのはおかしなことではないですし、店員さんも一旦チャレンジ(厨房に聞くなど)してくれるようなのです。
友人曰く、「どんなレストランでも、聞いてみると意外とできることも多いよ」とのこと。
その後、レストランで周りを観察してみると、確かに、インドの方がメニューや調理法をリクエストしている場面をよく目にし、食事を楽しむために聞かなきゃ損なのかも、という気持ちにもなってきました。
それからは徐々に恥ずかしがることなく「できる?」と聞くことができるようになり、途中からは、何ができるかを確かめる店員さんとのコミュニケーションが楽しみにもなったのでした。
「メニューにないから」と決めつけず、できる方法を見つけてやろうとする思考法(ジュガード)は日常にも潜んでいると感じます。
インド在住の方、これからインドに渡航する方にもぜひ試してもらいたいです。
言葉の使い方と根底の考え方を理解した上でコミュニケーションを
日本人は、評価において慎重であり、仮に8割の自信があっても「できる」と断言することにためらいを感じることが多いように感じます。
そういった側面を考えると、日本人の「できる」は確実性が高いという意味においては安心できるかもしれません。
その一方でインド人は、自らのポテンシャルへの期待を込めて「できる」という表現を使うことが多く、日本人から見るとかなり楽観的に考えていると言えるでしょう。
同じ言葉を違うニュアンスで使う両者が同じ職場で働くと、コミュニケーションミスが発生しがちなのは言うまでもありません。
インド人のコミュニケーションの特性や、その根本にある「ジュガード」という考え方を知っておくとインドでの生活、仕事をより快適に乗りこなせるかもしれません。
- 執筆者プロフィール -
編集スタッフK
大学卒業後、大手IT企業に勤めたのち、2019年に在インド日系人材紹介会社へ転職。主に製造業を担当し、現地日系企業の組織拡大のための採用サポートに従事。インド在住時は各地のマラソン大会に出走。その後結婚、転職、出産を経て現在は若者向けの海外越境支援サポートをするベンチャー企業に勤務。二児の母。