日本人はびっくり?インド流の家族愛「急な欠勤」の理由とは
インドでは長蛇の列に並ぶことがしばしばあります。さすが世界一の人口を誇る国。
この日も、空港で長蛇の列に少し苛立ちを感じながら、順番を待っていました。
すると、後ろから凄い勢いで順番をぬかしていくインド人がいました。「列に並んでくれないかな」と苛立ちながらも、彼の言い分に耳を傾けてみると「このままだと、飛行機に乗り遅れてしまう!家族に会いに行かないといけないから、先に行かせてほしい!」
その声を聞くと、列に並ぶ人が全員順番を譲って、最前列へ。え、そんなことあるの?と拍子抜け。
その後インドで生活する中で、「家族」というパワーワードに自分が適応していくことになるとは、思ってもみませんでした。
インドは、私たち日本人が知っているようで知らないことの多い国ではないでしょうか?
インドは28の州と8つの連邦直轄地域から構成されている、多様な文化と伝統が交錯する国であり、特に家族を重視する文化が根強く残っています。
この記事では、インドの「家族に関する考え方」について、「賃貸物件の形態」「結婚の方法」「仕事と家族の予定のバランス」の3つの具体例を用いて紹介していきます。
「一人暮らしは想定外?」日本人には予想外の賃貸物件
インドの家族は、個人主義が強い西洋文化とは対照的に「大家族文化」と言って良いでしょう。
インド映画では、大学で寮に入るなどの、孤独に一人暮らしをする様子は少なく、大勢で生活する様子がよく見られます。
つまり、親、子供、祖父母、叔父、叔母などが一つの家に住むことが一般的であり、家族全体で生活を支え合っているのです。
そのため、インドではアパートの作りや賃貸の方法が「一人暮らし」前提ではない場合も多く存在します。
筆者が単身でインドに渡った際も、部屋探しで驚く異文化体験をしました。
部屋探しの中で見せてもらった賃貸物件は、基本的に3部屋以上あり、家族での生活を想定しているとのこと。一人で都会に住むのであれば、複数名でルームシェアすることが前提になっている物件が多かったのです。
また、賃貸のルールで、ルームシェア物件ではない場合のルームシェアは「親族以外お断り」というところも多い印象でした。
日本では社会人が一人暮らしをすることは当たり前のため、これは驚きの異文化体験でした。
結婚相手は家族が決める!?まだまだお見合い結婚が主流のインド
2018年に行われた調査によると、インドの夫婦の93%がお見合い結婚です。(出典)
若者や大都市においては恋愛結婚の割合が高いなど、年代や住んでいる地域によっても大きな差があるのですが、大きく捉えると現在もインドのカップルの多くはお見合い結婚をしていると考えて良いでしょう。
筆者の周りにも恋愛結婚をするインド人の同僚もいましたが、多数派ではないというように感じました。
お見合い結婚において、結婚相手は家族が選ぶということが多いです。
具体的には、カースト、家の職業、占星術によるホロスコープの相性等、「同等の相手と結婚する」という考え方が重視されます。
筆者にとってお見合い結婚は、「日本の古い習慣」というイメージ。
そのため、現代インドの大都市で働く同僚のほとんどが、お見合い結婚を当たり前のようにしていることに驚きました。
大事な「仕事」よりも、大事な「家族」
インド人が家族を大切にするという文化を知った上でも、日常的に驚くことは多々あります。
例えば、筆者がインドで働いてる時のこと。大事な仕事が大詰めの日の朝、同僚から突然の欠勤連絡がありました。本当に切羽詰まっている時だったので、どうしよう!と筆者は少しパニックに。
理由を聞いてみると「叔母が入院したので家族全員でお見舞いに行く」とのこと。
筆者からすると、「同居家族が危篤」などならともかく、「叔母の入院」であれば、それは全員で行く必要あるの?そして何より、「今日」「あなたが」行く必要があるの?と問いたくなってしまったのですが、それは日本人の価値観の押し付け。
「叔母の入院のお見舞いに行く」は、その時の彼と彼の家族にとって外せない、とても大事なことなのです。
このように、成人した社会人でも、家族・親戚の体調不良があれば全員で飛んでいくことが、インドではよくあります。
むしろ、彼らからみたら、「いつでも仕事優先」と見える日本人のやり方が不思議なものかもしれません。
最後に
インド人と仕事をする上で、インドの「家族を重視する文化」を理解することはとても重要です。彼らの意思決定の背景にある文化を知らずしてインドでの仕事はスムーズにいかないでしょう。
日本で働いていると、最近はプライベートなことには触れないようにしていく傾向がありますが、インドではその逆で、むしろ家族のことを気遣っていくことも必要なコミュニケーションになりそうです。
異文化を経験しながら、インドを味わってみてください。
- 執筆者プロフィール -
編集スタッフK
大学卒業後、大手IT企業に勤めたのち、2019年に在インド日系人材紹介会社へ転職。主に製造業を担当し、現地日系企業の組織拡大のための採用サポートに従事。インド在住時は各地のマラソン大会に出走。その後結婚、転職、出産を経て現在は若者向けの海外越境支援サポートをするベンチャー企業に勤務。二児の母。