Zepto、IPOへ─インドのクイックコマースは「成長」から「収益化」の時代へ

インド在住のインドビジネス専門家、株式会社hoppin CEO・滝沢頼子が、インドの最新ニュースをピックアップし、現地ならではの視点で解説します。ニュースの概要に続き、専門家コメントをお届けします。


クイックコマースとは、注文から配達までの時間を極限まで短縮した配送サービスのことだ。想像してみてほしい。必要な商品が、わずか10分で手元に届くという世界。インドではすでにこれが日常の一部になりつつある。

クイックコマースのBlinkitで注文した商品を受け取るところ(筆者撮影)

    

クイックコマースの背後には、人口密集地域に「ダークストア」と呼ばれる倉庫が設置され、効率的な物流ネットワークが構築されている。そのため、たとえば水一本や急ぎで必要な日用品、生鮮食品も、注文後わずかな時間で届けられる。これによって消費者は時間を有効に使えるようになり、便利な生活が実現しているのだ。     

インドのクイックコマース大手Zeptoは、インド証券取引委員会(SEBI)から約1,100億ルピー(約13億ドル)規模のIPOについて原則承認を取得した。

   

2021年設立のZeptoは、スタンフォード大学を中退したAadit PalachaとKaivalya Vohra が創業。10分デリバリーを武器にインド第2〜3位のクイックコマースプレイヤーに成長しており、上場は2026年7〜9月期を目指している。

創業者の2人(出典:Fortune India

     

Zeptoは現在、機関投資家へのロードショーを実施中。2028〜29年度の通期黒字化を投資家に提示しており、直近四半期(2026年1〜3月)のキャッシュバーンは85〜90億ルピーと、数四半期前の120〜130億ルピーから大幅に改善している。

ただし上場環境は楽観できない。Blinkitが黒字化に近づく一方、Swiggy(Instamart)の株価はIPO後に約30%下落しており、市場はクイックコマースの収益モデルに対して厳しい目を向けている。

Zeptoの現金残高は約6〜7億ドルと、Blinkit(約19億ドル)やSwiggy(約17億ドル)に比べて薄く、資本力の差が課題として指摘されている。

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専門家コメント(hoppin 滝沢頼子)

Zeptoはインドのクイックコマース市場で急成長を遂げてきた注目プレイヤーだ。これまでは「資金調達でダークストアを倍増する」というフェーズだったが、いよいよIPOという次のステージへ進もうとしている。

街中にある配送拠点「ダークストア」の様子(筆者撮影)

    

注目したいのは「黒字化2028〜29年度」という目標だ。インドのクイックコマースはここ数年、「とにかく規模を拡大する」フェーズで走ってきた。

しかしSwiggyの上場後の株価下落が示すように、市場は「成長の物語」だけでは納得しなくなってきている。Zeptoが投資家に「いつ黒字になるか」を前面に出してきたのは、そうした変化への対応ではないだろうか。

現地で生活していると、クイックコマースは本当に生活インフラになっていることを実感する。だからこそ「このビジネスは持続するのか」という問いは重要だ。ZeptoのIPOはその答えの一つになるだろう。

参考:便利すぎてやめられない?注文から10分で商品が届く、インドのクイックコマースの実情
参考:こんなにすごい、インドの「クイックコマース」!日用品から救急車も「10分で届く」…負の側面あるも日本企業が学べること

hoppin

- 執筆者プロフィール -

滝沢頼子/株式会社hoppin

東京大学卒業後、UXコンサルタントとして株式会社ビービットに入社。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。
その後、上海のデジタルマーケティング会社、東京のEdtech系スタートアップを経て、2019年に株式会社hoppinを起業。UXコンサルティング、インドと中国の市場リサーチや視察ツアーなどを実施。2022年よりインド在住。

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