インド・電動二輪のOla Electric、劇的なV字回復──3月販売150%増、LFP新型電池も量産へ

インド在住のインドビジネス専門家、株式会社hoppin CEO・滝沢頼子が、インドの最新ニュースをピックアップし、現地ならではの視点で解説します。ニュースの概要に続き、専門家コメントをお届けします。


かつてインド電動二輪市場の王者として君臨しながら2025年に大きく失速したOla Electricが、2026年4月、急速な復活の兆しを見せている。

Olaが売り出し中のS1 第三世代(公式サイトより)

 

3月の登録台数が2月の3,973台から10,117台へと前月比150%超の急増を記録。Ola Electric自身が「V字回復」と表現し、株価も3月2日につけた最安値21.21ルピーから4月に70%以上反発した。

販売回復の背景にはサービス体制の改善がある。同社によれば、現在80%以上の車両が当日中にサービス対応されており、部品供給の改善・診断の迅速化・ネットワーク全体の運営管理強化によって実現したという。

「修理が遅い」イメージを覆す新サービス「Hyperservice」(公式サイトより)

 

技術面でも大きな動きがあった。4月7日、Ola Electricは自社開発のリン酸鉄リチウム(LFP)セルの量産準備完了を発表。現行の4680 NMCセルより大型の46100フォーマットで、モビリティと蓄電の両分野にわたってコスト効率と汎用性が大幅に向上するとしており、次の四半期から自社製品への搭載を開始する予定だ。

さらにBharat Cell搭載のRoadster X+ 9.1 kWhモデルはギガファクトリーでの量産効率化により、価格を18万9,999ルピーから12万9,999ルピーへと約6万ルピー引き下げた。

ただし市場の見方は慎重だ。アナリストはOla Electricが「危機フェーズ」から「結果を見せるフェーズ」に移行したと指摘しており、4月・5月の登録台数が回復を持続できるかどうかを次の判断材料として注視している。

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専門家コメント(hoppin 滝沢頼子)

今年1月、私は「失速したOla Electricは再浮上できるのか」という記事を書いた。当時の結論は「『勢い』ではなく『作り込みと運用力』が問われるフェーズに入った」というものだった。3ヶ月後の今、その問いへの答えが少しずつ見えてきた。

3月の販売台数150%増という数字は確かにインパクトがある。ただし注意が必要だ。月末に最大5万ルピーの値引きキャンペーンを実施した結果であり、「構造的な需要回復」と断言するにはまだ早い。アナリストが「4月・5月の数字を見てから」と慎重な姿勢をとるのも、そのためだと考えられる。

それよりも私が注目しているのは、LFP版Bharat Cellの量産準備完了という技術的なマイルストーンだ。記事でも書いた通り、バッテリーの内製化はEVメーカーにとって原価構造そのものを変える話であり、今回の46100フォーマットへの進化とRoadster X+の6万ルピー値下げはその「効果の兆し」と見ることができる。

店頭に並ぶ電動バイク「Roadster X+」(写真:筆者撮影)

販売回復が「値引きによる一時的なもの」か「サービス改善と技術進化による本物の回復」かは、今後数ヶ月のデータが示すだろう。Ola Electricの本当の勝負はここからだ。

hoppin

- 執筆者プロフィール -

滝沢頼子/株式会社hoppin

東京大学卒業後、UXコンサルタントとして株式会社ビービットに入社。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。
その後、上海のデジタルマーケティング会社、東京のEdtech系スタートアップを経て、2019年に株式会社hoppinを起業。UXコンサルティング、インドと中国の市場リサーチや視察ツアーなどを実施。2022年よりインド在住。

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